尾畠春夫さんの追突事故疑惑に思うこと

稀代のボランティア

尾畠春夫氏(78)といえば、山口県周防大島町で行方不明だった藤本理稀ちゃん(2)を発見・保護し一躍有名となった人だ。

警察が平地ばかり捜索しているのに対して『子供は上る』という独自の見識から一人で山野を捜索し、見事な救出劇を演じてみせた。

尾畠氏の経歴については、方方で語られ尽くしており、ここでは言及しない。まさしく今をときめく稀代のボランティアである。

そんな尾畠氏にある疑惑が持ち上がっている。

追突事故

発端は@azumax1976というTwitterユーザーがつぶやいた下記のツイート。

五年前に尾畠氏が追突事故をおこしたうえ、逃げ回っているという内容だ。

事故の真偽

この件については推測に推測を重ねるしかない。そして『完全な嘘ではないものの事実誤認がありそう』というのが現在できる最も確からしい推測だ。

まずこのツイートは五年前のものである。
今でこそ有名な尾畠氏だがこの時点ではさほど露出もなく、誰かが嘘をついてまでこのようなデマを流すとは考えにくい。

次にツイート中の 097 という市外局番に注目しよう。
尾畠氏の居住地とされる大分県日出町(市外局番:0977)のものに近似している。

そして事故現場。
豊後大野警察署が管轄していることから大分県豊後大野市(日出町とは車で一時間、70kmほどの距離)と読み取れる。年間多くの日数をボランティアに割き日本中を飛び回る尾畠氏だが、事故が起きたとされる1月5日は故郷大分で過ごしていた可能性が高い。

時間・場所・タイミングを考えるに、ツイートにある追突事故は実際に起こったという線が濃厚である。

ただしそこから先のツイートには注意が必要だ。

不幸なスレ違い

事故の状況を推測してみよう。

2013年1月5日、ロードバイクに跨った@azumax1976氏が交差点信号で停止中、尾畠氏の乗る軽自動車に追突された。

軽自動車から飛び出てきた尾畠氏は、怪我の具合を確認し、名前と電話番号を伝えた。

即座に警察・救急車への連絡があったかは不明だが、常識的に考えればすぐに呼ばれただろう。※本件はのちに豊後大野警察署が介入したことが確定している。

しかしここで不幸なスレ違いが起きる。

尾畠氏の連絡先がきちんと相手に伝わらなかったのだ。

尾畠氏が慌てていて、電話番号を伝え間違えた、あるいは声が震えて電話番号をうまく伝えられなかった。
あるいは、被害者である@azumax1976氏が怪我をしていて、うまく聞き取れなかった。

交通事故で相手の連絡先に繋がらないとなれば、被害者からすれば相手が『逃げ回っている』と認識する可能性は低くはない。実際はそうでなかったとしても関係がない。交通事故の被害者というのは、かなり疑心暗鬼になるものだ。

また@azumax1976氏が、一般人にすぎない尾畠氏の本名をTwitterに晒している点からも、およそ常識的な判断能力を欠いていたことがわかる。仮に問題が解決したあとも、そうした時期のことは記憶が曖昧であるし、訂正するのは面倒なものだ。

どこかの新聞だって捏造記事で国際問題を起こしたあとの謝罪記事なんて書かないし、ましてや@azumax1976氏の件は本人にとって捏造ではないのだから、なおさらだ。

本当に尾畠氏が逃げ回るつもりなら、正しい本名を教えて電話番号だけ嘘をつくわけがない。しかしそんなことは被害者にとって関係がないのである。

結論

交通事故という非日常、高齢の尾畠氏という条件が重なった結果、不幸なスレ違いが生まれたと結論付けられる。